この本の中で、強く印象に残っている一節がある。
「政策決定の方式としての民主主義と、それが決定する政策は同じものではない。
その政策が必ずしも『自由』の保障にも『平等』の保障にもならないことは、歴史が示している。しかし、このことを議論するためには、歴史、とくに思想史について、ほぼ同じ程度の知識と情報を得ていることが不可欠である」
民主主義という“仕組み”と、そこから生まれる“結果”は同一ではないことを、明確に意識させられたのははじめてだったかもしれない。
そして、その間をつないでいるものとして、歴史、とりわけ思想史が幾層にも折り重なっていることに、あらためて気づかされた。
この本を面白いと感じた理由は、結論を提示することよりも、知的好奇心や探究心に導かれて思考が進んでいく過程そのものが、日記のように記されているところ。
そこには思想や考えが確かに見えるけれど、それを読者に押しつけてくる感じがなくていいなと思った。
そもそもこの本を手に取ったのは、昔からなぜかトルコに惹かれてきたからだと思う。イスラーム、オスマン帝国、ケマルさん、そんな歴史的な重なり。
読み終えて、トルコ行きたい気持ちと、行きたくない気持ちの両方が強くなった。
できることならば、観光地を巡るだけではなく、できるだけ現地の生活に近いところに身を置いてみたいものです。
民族や言語といった「枠組み」について考えるきっかけも与えてくれた。
目には見えないその境界が、どのように引かれ、どのように維持されているのか。
そして、それを自分がどれほど無意識のうちに前提として受け入れてきたのか。
その区切りが、思っていた以上に、自分の思考や感覚を静かに支配していると気づいて、少し怖くなった。
とても面白い本でした。
